富士山のふもとに生まれ、トスカーナに移り住んで13年。尾崎達彦さん(みんなからは「タツ」と呼ばれています)が、いま少し無謀とも言える挑戦に取り組んでいます。日本の固有品種である甲州(こうしゅう)を、イタリア・トスカーナの山あいで育てようというのです。
畑があるのは、トスカーナ北部、アルト・ムジェッロと呼ばれる地域のフィレンツォーラ。標高720メートルの斜面で、カサヌオーヴァやリフレード、ジョーゴ峠のあたり、プリーニョという小さな土地です。これまで牛乳やじゃがいも、お肉や牧畜で知られてきた一帯で、ワイン用ブドウの産地というイメージはほとんどありませんでした。風に吹かれる古い石造りの家が一軒あるだけの場所だったといいます。
甲州はとても繊細で、栽培の難しい品種です。その甲州を、本場の日本から遠く離れたイタリアの高地に根づかせようとしている。イタリアの食メディア「ilgusto.it」にレオナルド・ロマネッリ氏が寄せた記事で紹介されました(元記事はこちら)。タイトルはずばり「富士山からムジェッロへ」。一人の日本人の夢が、トスカーナの新しい一歩になろうとしています。
SWIRLの視点
正直に言うと、この話を読んで胸が熱くなりました。私たちSwirlは、日本の会社としてイタリアワインを日本にお届けしています。つまり「イタリアと日本をつなぐ」ことが仕事です。タツさんがやろうとしているのは、ちょうどその逆向き。日本のブドウをイタリアの土地に植えるという、もう一つの架け橋です。方向は逆でも、根っこにあるのは同じ、二つの国への敬意と愛情だと思います。
ワインは農業であり、自然そのものです。甲州がムジェッロの土で実をつけ、ボトルになるまでには、何年もの時間と、たくさんの試行錯誤が必要でしょう。すぐに結果を求めず、土地と根気よく向き合い続ける。その姿勢こそ、私たちが信頼している造り手たちと共通するものです。タツさんの甲州が世に出る日を、心から楽しみに待ちたいと思います。
そして、その日を待つあいだに、ぜひ「いまのトスカーナ」も味わってみてください。私たちが扱うテレンツィ(Terenzi)は、トスカーナ・マレンマの造り手です。繊細な甲州を思わせる、ミネラル感のある白ワイン「バルビーノ」から、トスカーナの赤の主役サンジョヴェーゼ(品種名)を使った「モレッリーノ・ディ・スカンサーノ」まで。トスカーナの今をグラスで感じながら、タツさんの挑戦の行方を一緒に見守りましょう。
品種のことをもっと知りたい方はサンジョヴェーゼ品種ガイドを、トスカーナという産地についてはイタリアワイン産地ガイドもあわせてどうぞ。
お酒は20歳になってから。適量を楽しく。

