焼き鳥にはビール、ではなくワインを試してみてください。
トスカーナ生まれのソムリエとして東京に来て最初に驚いたのが、焼き鳥のペアリングのポテンシャルでした。炭火で丁寧に焼かれた鶏の旨味と脂、タレや塩の香ばしさは、イタリアの赤ワインと非常に高い親和性があります。
焼き鳥とワインのペアリングとは、串ごとの脂肪量・塩分・旨味の違いをワインのタンニン・酸・果実感と合わせる技術です。部位によって性質が大きく異なるため、一本のワインで全ての串を攻略することも、串ごとに飲み分けることも楽しめます。
よくある誤解:「焼き鳥にはビール一択」ではない
「焼き鳥にはとりあえずビール」という文化は日本に根付いていますが、ワインを合わせると全く違う焼き鳥の世界が開けます。
特にプリミティーヴォやサンジョヴェーゼのような南・中部イタリアの赤ワインは、炭火焼きの香ばしさと果実のコクが共鳴し、鶏の旨味を何倍にも引き立ててくれます。「焼き鳥×赤ワイン」は意外な組み合わせに聞こえますが、試した方の多くが「なぜ今まで試さなかったのか」とおっしゃいます。
部位別ペアリング対応表
焼き鳥の面白さは部位ごとの個性にあります。各部位の特性に合わせたワインを選ぶことで、串の一本一本が違う味わいになります。
| 部位 | 味わいの特性 | 合うワイン | 理由 |
|---|---|---|---|
| ねぎま(もも肉) | 旨味のバランスが良く、最も汎用的 | プリミティーヴォ、サンジョヴェーゼ | 果実味と旨味が互いを引き立てる |
| つくね | タマゴ・ニンニク入り、コクあり | フルボディ赤(バルベーラ、プリミティーヴォ) | 濃さを濃さで受け止める |
| 皮(とりかわ) | 脂肪分が高く、カリカリ食感 | スパークリング(ブリュット) | 泡が脂をリセット、口中をすっきりさせる |
| レバー | 鉄分の風味、濃厚 | 甘口白(モスカート)、軽めの赤 | 甘みが鉄の風味を和らげる(対比のペアリング) |
| 砂肝 | コリコリした食感、あっさり | 辛口白(ヴェルメンティーノ、ソアーヴェ) | クリーンな酸が淡白な旨味を引き立てる |
| せせり | 首肉、弾力あり、脂のバランス良 | 中程度の赤(サンジョヴェーゼ) | タンニンの柔らかさと肉の旨味がマッチ |
| ぼんじり | 尾骨周りの脂肪が多い部位 | フルボディ赤(プリミティーヴォ) | 豊かな脂に濃厚な果実味が必要 |
タレと塩:調理法でワインを切り替えるイタリア流
イタリアでは「味付けによってワインを変える」という考え方が当たり前です。焼き鳥のタレ・塩の違いに合わせてワインを変えると、コース料理のような体験になります。
| 味付け | 特性 | おすすめワインスタイル |
|---|---|---|
| タレ | 甘辛い醤油ベース、旨味が強い | 果実味豊かな赤(プリミティーヴォ)、旨味が共鳴 |
| 塩 | 素材の味を前面に、あっさり | 辛口白または軽めの赤(ヴェルメンティーノ、ピノ・ネロ) |
興味深い事実があります。焼き鳥の「串焼き文化」は明治時代(1868-1912年)に本格化しました。それ以前の日本では四足動物を食べることへの宗教的な禁忌が一部残っており、鶏を炭火で手軽に食べられる焼き鳥が明治以降に急速に広まりました。一方、南イタリアのプーリア州では同時期、プリミティーヴォのブドウ畑で働く農家が炭火で肉を焼くスタイルが根付いていました。両文化は異なる土地で同時期に「炭火×肉」の組み合わせを洗練させていったという歴史的な偶然の一致があります。
日本の居酒屋でワインを楽しむコツ
東京の居酒屋はここ数年でワインリストを置く店が増えています。焼き鳥専門店でワインを楽しむ際の実践的なポイントをお伝えします。
まず、ワインを最初に選ぶのではなく、食べたい串を決めてからワインを選ぶことをおすすめします。「ねぎまとつくねを中心に食べたい」なら果実味のある赤、「砂肝や皮がメイン」なら白かスパークリング、というように串から逆算するとスムーズです。
グラスワインが一種類しかない場合は、タレの串と白ワインの組み合わせより、タレの串と赤ワインの方が失敗が少ないです。逆に塩の串には白ワインがよく合います。
家飲みで焼き鳥を楽しむ場合は、コンビニやスーパーの焼き鳥パックでも試せます。電子レンジ仕上げより魚焼きグリルで軽く炙ると香ばしさが増し、ワインとの相性が格段に上がります。
フェデリーコのおすすめ:プリミティーヴォと焼き鳥
東京で焼き鳥を食べながら飲むワインとして、私が最もよくお出しするのがプリミティーヴォです。南イタリア・プーリア州産のこのブドウは、炭火焼きとの相性が特別に良いのです。
スミレとカカオのような香り、熟した黒果実の豊かな果実感、柔らかいタンニン、そして後に残る温かみのある余韻。これが焼き鳥のタレの甘辛さ、鶏の脂の旨味と重なると、どちらも単独よりずっと美味しくなります。
よくお出しするのは、ドッピオ・パッソ プリミティーヴォです。プーリアの太陽をたっぷり受けたプリミティーヴォから造られ、15度前後の温度帯で楽しむのがおすすめです。ねぎま、つくね、ぼんじり、どの串とも自然に合います。
選び方のまとめ
① 脂肪の多い部位(ぼんじり、皮)にはフルボディ赤かスパークリング
② あっさり部位(砂肝、ささみ)には辛口白
③ タレには果実味豊かな赤、塩には白または軽めの赤
④ レバーなど鉄分が強い部位には甘口白(対比)
⑤ 迷ったらプリミティーヴォ:タレの串全般とほぼ外れなし
関連記事: ステーキとワインのペアリング、パスタとワインのペアリング
よくある質問
Q. 焼き鳥にロゼワインは合いますか?
A. よく合います。特に塩焼きの串に辛口ロゼは非常に使いやすいです。果実感と酸のバランスが良く、鶏の脂を流してくれます。
Q. 日本酒も好きですが、比べるとワインの方が合いますか?
A. 甲乙つけがたいですが、タレの串には赤ワインの果実感が特に際立ちます。塩の串には吟醸タイプの日本酒と辛口白ワインが同じくらい相性が良いです。
Q. 渋いワインは焼き鳥に合わない?
A. タンニンが非常に強いワイン(バローロの若いヴィンテージなど)はやや合わせにくいですが、プリミティーヴォのように柔らかいタンニンの赤ワインなら問題ありません。タンニンの強さとチキンの脂肪量のバランスを意識してください。
Q. 大勢でシェアする場合のボトル選びは?
A. 様々な串を楽しむ場合は、果実味があり酸もあるミドルボディ赤(サンジョヴェーゼ系またはプリミティーヴォ)か、スパークリングが最も汎用的です。どちらも塩・タレ両方の串に対応できます。
Q. コンビニの焼き鳥パックにも合いますか?
A. はい、十分楽しめます。ポイントは食べる前に魚焼きグリルで1-2分炙ること。香ばしさが増し、ワインとの相性がぐっと上がります。

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