モレッリーノ・ディ・スカンサーノとは、イタリア・トスカーナ州のマレンマ地方で、サンジョヴェーゼから造られる赤ワインです。「モレッリーノ」は、この土地でのサンジョヴェーゼの呼び名。キアンティやブルネッロと同じブドウですが、海に近い温暖なマレンマでは、よりやわらかく果実味ゆたかな、親しみやすい味わいになります。すぐれた畑のものは、DOCG(イタリアワインの最高ランクの格付け)に認められています。
東京でイタリアワインを注いでいると、「サンジョヴェーゼは渋くて難しそう」という声をよく聞きます。モレッリーノは、その印象をやさしく裏切ってくれる一本です。
名前の由来とよくある誤解
まず、よくある誤解から。「モレッリーノ」という固有のブドウがあるわけではありません。中身はサンジョヴェーゼです。スカンサーノという町を中心とした地域で、地元の人がそう呼んできた、いわば愛称です。
名前の由来には諸説あり、はっきりとは分かっていません。ブドウの色が濃いことから「モレッロ(黒っぽい、の意)」が転じたという説、地元マレンマで活躍した黒い馬「モレッリ」にちなむという説などが語られます。どれが正解かは決着していませんが、土地と暮らしに根ざした名前であることは確かです。
味わいの特徴
チェリーやスミレを思わせる華やかな香りに、サンジョヴェーゼらしいいきいきとした酸。タンニン(渋み)はやわらかで角がなく、するすると飲めてしまいます。重すぎないミディアムボディなので、和食にも合わせやすいのが魅力です。
| 項目 | 傾向 |
|---|---|
| ボディ | ミディアム |
| 酸味 | いきいきと高め |
| 渋み(タンニン) | やわらかい |
| 香り | チェリー、スミレ、ハーブ |
| 飲み頃温度 | 16〜18℃ |
産地で変わるスタイル
同じサンジョヴェーゼでも、産地で表情が変わります。マレンマは海に近く温暖なので、ブドウがしっかり熟し、果実味がふくよかで親しみやすい味になります。内陸のキアンティはより酸とタンニンが引き締まり、ブルネッロの故郷モンタルチーノは長期熟成向きの力強さが出ます。
| 産地 | スタイルの傾向 |
|---|---|
| マレンマ(モレッリーノ) | やわらかく果実味ゆたか、早くから楽しめる |
| キアンティ | 酸とタンニンが引き締まった食中酒 |
| モンタルチーノ(ブルネッロ) | 力強く長期熟成向き |
マレンマには、「ブッテリ」と呼ばれる本物のカウボーイが今も暮らしています。馬に乗って牛を追う彼らが、野で食べてきたのが「アックアコッタ(acquacotta、直訳すると“煮た水”)」という素朴なスープ。固くなったパンに、野菜とオリーブオイル、卵を落とした、文字どおり何もないところから生まれた一皿です。日本ではまず知られていませんが、マレンマの食卓では今も愛されています。このアックアコッタに、若いモレッリーノを一杯。飾らない土地の、飾らないペアリングです。
日本での楽しみ方と合う料理
モレッリーノは、日本の食卓でとても使いやすい赤です。トマトソースのパスタやピザはもちろん、すき焼きや肉じゃが、照り焼きのような甘辛い味つけにもよく合います。サンジョヴェーゼの酸が、醤油や味噌のコクをすっきりまとめてくれるからです。鶏の照り焼き、豚の角煮、ハンバーグ。家庭の定番おかずと合わせてみてください。
「赤ワインは重くて苦手」という方にこそ試してほしい一本です。少し涼しい16℃くらいに冷やすと、果実味と酸がより心地よく感じられます。夏はワインセラーがなくても、飲む前に15分ほど冷蔵庫に入れるだけで、ぐっとおいしくなります。マレンマの人々が暑い夏に楽しむように、軽く冷やして気軽にどうぞ。
フェデリーコのおすすめ
モレッリーノを試すなら、私がよくお出しするのはマレンマの造り手テレンツィのモレッリーノ・ディ・スカンサーノです。サステイナブル農法で、チェリーのような果実味とやわらかな飲み心地。毎日でも開けたくなる、肩の力が抜けた一本です。下のカードからお求めいただけます。
サンジョヴェーゼやイタリアの産地をもっと知りたい方は、ワイン産地ガイドものぞいてみてください。
選び方・似ているワイン
はじめの一本なら、新しめのヴィンテージ(収穫年)の若いものが、果実味がいきいきとしておすすめです。少し冷やして、食事と一緒に楽しむのが一番。同じサンジョヴェーゼでも、より引き締まった味わいが好みならキアンティを。さらに重厚な赤に進みたくなったら、ピエモンテのバローロもおすすめです。飲み比べると、イタリアの奥深さが見えてきます。
よくある質問
Q. モレッリーノ・ディ・スカンサーノは、どんなブドウですか?
A. サンジョヴェーゼです。トスカーナのマレンマ地方での呼び名が「モレッリーノ」です。
Q. キアンティとどう違いますか?
A. 同じサンジョヴェーゼですが、海に近い温暖なマレンマのモレッリーノは、よりやわらかく果実味ゆたかで、早くから楽しめます。
Q. DOCGとは何ですか?
A. イタリアワインの最高ランクの格付けです。産地や造りの基準を満たした、信頼できる品質の証です。
Q. よくある失敗は?
A. 温度の上げすぎです。常温(特に夏の室温)では重たく感じます。少し冷やすと、本来の果実味と酸が引き立ちます。
渋すぎず、重すぎず。サンジョヴェーゼの入口にぴったりの一本です。マレンマの陽気さを、東京の食卓でもぜひ。

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