マレンマ・トスカーナとは、トスカーナ州の南に広がる、海に面した比較的新しいワイン産地です。 内陸のキャンティやモンタルチーノに比べて知名度はまだ控えめですが、私が日本の食卓にいちばん薦めたいサンジョヴェーゼが育つ場所です。今日は、その丘を訪ねた時の話をさせてください。
海の風が吹くサンジョヴェーゼの丘
ローマから北へ車を走らせ、内陸の渋滑を抜けると、景色が急にひらけます。ティレニア海の光が届く、なだらかな丘。ここがマレンマです。かつてこの一帯は湿地帯で、人が本格的に住み、ブドウを植えるようになったのは比較的最近のこと。だからこそ、古い格式よりも、のびやかで日常に寄り添うワインが生まれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | トスカーナ州南部、海沿い |
| 気候 | 温暖で、海風がよく通る |
| 主なブドウ | サンジョヴェーゼ(地元名モレッリーノ) |
| 味わいの傾向 | やわらかい渋み、赤い果実、親しみやすい |
名前の秘密、モレッリーノと黒い馬
この土地では、サンジョヴェーゼを「モレッリーノ」と呼びます。名前の由来には諸説ありますが、地元で愛されているのは馬にまつわる話です。かつて役人やその家族が夏にスカンサーノの丘へ避暑に来るとき、その馬車を引いていたのが「モレッリ(morelli)」と呼ばれる黒みがかった毛色の馬でした。その馬の色が、このワインの深い色合いを思わせる。だからモレッリーノ、というわけです。日本ではまず知られていない、土地の記憶がそのまま名前になったような話で、私はこの由来がとても気に入っています。
テレンツィの蔵で
丘の上のテレンツィを訪ねると、ステンレスタンクがきれいに並んでいました。伝統的な造りを守りながら、温度を管理して赤い果実の新鮮さを最大限に引き出す。飲ませてもらったモレッリーノは、スミレのような香りと、やわらかいミディアムボディ。気取らず、けれど芯のある味わいで、「30本まとめて買いたくなる」という彼らの言葉が、その場でよくわかりました。
日本での楽しみ方
モレッリーノの魅力は、渋みがおだやかで、和の食卓にもすっと馴染むところです。すき焼きや肉じゃがのような甘辛い味つけ、鶏の照り焼き、きのこのソテーによく合います。夏の名残の暑い日には、15度くらいまで軽く冷やすと、赤い果実の輪郭がいっそう際立ちます。重すぎる赤は苦手、という方にこそ試してほしい一本です。
フェデリーコのおすすめ
この訪問記の主役、テレンツィ モレッリーノ・ディ・スカンサーノは、まさに毎日の楽しみとして飲みたいサンジョヴェーゼです。産地の背景を知ると、一杯の景色が少し変わります。マレンマという土地そのものをもっと知りたい方は、マレンマワインとはもあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. モレッリーノとサンジョヴェーゼは違うブドウですか?
A. 同じブドウです。マレンマ地方でのサンジョヴェーゼの地元名が「モレッリーノ」です。
Q. キャンティとはどう違いますか?
A. どちらもサンジョヴェーゼが主体ですが、海に近いマレンマのモレッリーノは、内陸のキャンティよりやわらかく、果実味が親しみやすい傾向です。
Q. 少し冷やしても大丈夫ですか?
A. はい。暑い季節は15〜16度に軽く冷やすと、香りと果実味が引き締まって美味しく楽しめます。
Q. よくある誤解は?
A. 「トスカーナの赤は渋くて重い」というイメージです。マレンマのモレッリーノは、その先入観をやさしく裏切ってくれます。
土地を訪ねると、ワインは物語になります。次の一本を選ぶとき、この海辺の丘を少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。

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