松茸(まつたけ)に合うワインは、重たい赤ではなく、香りを邪魔しない繊細で旨みのある赤、たとえばピエモンテのネッビオーロです。松茸は「味」よりも「香り」を楽しむ、日本の秋を代表する食材。だからこそ、合わせるワインも香りに寄り添う一本を選びます。イタリアでワインを輸入してきた立場から、秋の名品に合う一杯をご紹介します。
「高級食材だから重い赤」という誤解
松茸は特別なごちそうだから、濃厚で力強い赤を、と思われがちです。実際には逆です。渋み(タンニン)の強い若い赤や、樽のよく効いた濃い白は、松茸の繊細な香りを覆い隠してしまいます。松茸の魅力は、あの澄んだ香りと、だしにとけ出す上品な旨み。ここに寄り添うのは、酸がきれいで、タンニンがきめ細かく、土や落ち葉、きのこを思わせる香りを持つ、軽やかで熟成感のある赤です。ネッビオーロは、まさにその条件を備えたぶどうです。
食べ方で変わる、松茸のペアリング
| 食べ方 | 寄り添うワイン |
|---|---|
| 焼き松茸(すだち・塩) | 繊細なネッビオーロ、または旨みのあるミネラル白 |
| 土瓶蒸し(だし) | 旨みのある白、または軽い赤を少し冷やして |
| 松茸ご飯 | 軽やかな赤、香り高い白 |
鍵は「香り」と「だしの旨み」です。ソースの濃さではなく、繊細さで合わせると、松茸もワインも引き立ちます。
秋のピエモンテが教えてくれること
ネッビオーロの故郷、イタリア北西部ピエモンテ州のアルバの町では、秋になると白トリュフ(タルトゥーフォ・ビアンコ)の季節が訪れます。1929年に始まった「アルバ白トリュフ祭り」の頃には、町じゅうがトリュフの香りに包まれ、世界中から人が集まります。そして地元の人が、その香り高いきのこに合わせるのが、土や森を思わせる地ワイン、ネッビオーロなのです。香りを主役にした秋の味覚に、香りに寄り添う地元の赤を合わせる。日本の松茸とワインの関係と、驚くほどよく似ています。
日本の食卓での楽しみ方
焼き松茸や土瓶蒸しにネッビオーロを合わせるなら、少しだけ低めの温度(16℃前後)で。冷やしすぎるとタンニンが硬く感じられ、温すぎると香りがぼやけます。飲む30分ほど前に抜栓するか、軽くデカンタ(別の容器に移して空気に触れさせること)に移すと、香りがふわりと開きます。ネッビオーロの土や落ち葉のニュアンスが、松茸の香りとだしの旨みに静かに重なる。派手さはないのに、忘れられない組み合わせです。
フェデリーコのおすすめ
松茸によくお出しするのは、アレッサンドロ・リヴェットの「ランゲ・ネッビオーロ」です。バローロと同じネッビオーロから生まれる、酸ときめ細かなタンニン、そして森を思わせる香りが魅力の赤。松茸の繊細さを覆い隠さず、そっと持ち上げてくれます。白で楽しみたい日は、同じピエモンテのランゲ・アルネイスを。旨みと香りのある辛口白で、土瓶蒸しのだしともよく合います。
選び方と飲み頃
松茸に赤を選ぶなら、「タンニンがやわらかく、酸と香りのある、熟成感のある赤」が目印です。ネッビオーロのほか、繊細なサンジョヴェーゼや落ち着いたピノ・ノワールも同じ発想で楽しめます。飲み頃温度は16℃前後、香りの立つ少し大きめのグラスで。きのこ全般のペアリングはきのこに合うワイン、ネッビオーロそのものはネッビオーロとはもどうぞ。
よくある質問
Q. 松茸に白ワインは合いませんか?
A. よく合います。旨みと香りのある辛口白(アルネイスなど)は、特に土瓶蒸しや焼き松茸と好相性です。赤なら繊細なネッビオーロを選んでください。
Q. なぜ重い赤はだめなのですか?
A. 渋みや樽の香りが強いと、松茸のいちばんの魅力である繊細な香りを覆ってしまうからです。
Q. よくある失敗は?
A. 「高級だから」と濃厚な赤を合わせてしまうことです。松茸は香りの食材。軽やかで香り高い一本を選べば、ぐっと引き立ちます。
Q. デカンタがなくても大丈夫?
A. 問題ありません。飲む30分ほど前に抜栓しておくだけでも、香りは十分に開きます。
秋の香りの主役に、香りで応えるワインを。松茸の季節が、より豊かなひとときになります。

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