はじめて「ピノ・グリージョ・ロゼ」を手に取ったとき、多くの方が少し戈惑うかもしれません。ラベルに「ロゼ」とあるのに、色は淡いサーモンピンクや、ときに銅板のような琥珀色。普通のロゼとは何かが違う。その正体が「ラマート(Ramato)」と呼ばれる、北イタリアに1世紀以上前から根づく伝統スタイルです。
この記事では、ピノ・グリージョ・ロゼがなぜ生まれ、なぜ日本でいま注目されているのかを、ソムリエ目線でわかりやすく解説します。
ピノ・グリージョ・ロゼとは?
ピノ・グリージョ(Pinot Grigio)は、フランス語でいうピノ・グリ(Pinot Gris)と同じブドウ品種です。「グリ」はフランス語で「灰色」を意味し、実際の果皮は青みがかった灰色〜赤みがかったピンクと、ブドウにしては珍しい中間的な色調をもちます。この色素が鍵を握ります。
通常の白ワインは果汁だけを発酵させますが、ピノ・グリージョ・ロゼ(ラマート)は果皮を数時間から数日間、果汁と一緒に漬け込みます(スキンコンタクト)。そこで果皮の色素と風味が果汁へと溶け出し、銅のような輝きと複雑な香りが生まれるのです。
「ロゼ」ではなく「ラマート」? 違いはここ
「ロゼワインと何が違うの?」とよく聞かれます。一見似ていますが、製法も味わいも別物です。
- 普通のロゼ:赤ワイン用ブドウ(カベルネ、シラーなど)を短時間漬けて色を抜いたもの。果実感がメイン。
- ピノ・グリージョ・ロゼ(ラマート):グレーがかったピノ・グリージョ果皮から色素と旨みを引き出したもの。白ワインに近い複雑さと、軽いタンニンが特徴。
ピノ・グリージョ・ロゼ 基本スペック
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 色 | 淡いサーモンピンク〜銅色(琥珀) |
| 主要産地 | イタリア・ヴェネト、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア |
| ブドウ品種 | ピノ・グリージョ(100%) |
| 香り | 白桃、ネクタリン、ビターオレンジ、薔薇、ほのかにナッツ |
| 味わい | 辛口。白ワインより膨らみがあり、かすかにタンニンを感じる |
| 酸 | 中程度。爽やか |
| アルコール | 12〜13%程度 |
| 飲み頃温度 | 10〜14℃ |
産地で変わるスタイルと「ラマート」の歴史
| 産地 | スタイル |
|---|---|
| フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア(伝統地) | スキンコンタクト長め、濃いめの銅色。旨みと複雑さ重視 |
| ヴェネト(現代スタイル) | スキンコンタクト短め、淡いサーモンピンク。フレッシュ感重視 |
| アルト・アディジェ | 透明感のある淡い色調。花の香りが際立つ |
ここで、イタリアのワイン生産者なら誰もが知っているのに、日本ではほぼ伝わっていない話をひとつ。
「ラマート」という言葉はイタリア語の「ラーメ(rame)=銅」に由来します。フリウリでは100年以上前からピノ・グリージョをこのスタイルで造るのが当たり前でした。ところが1960年代初頭、サンタ・マルゲリータ社がイギリスやアメリカの輸出市場向けに「淡い色の辛口白ワイン」として現代スタイルのピノ・グリージョを売り出したことで、伝統的なラマートはみるみる姿を消しました。地元の農家には「うちの祖父の頃はみんなこうやって造っていた」という当たり前の知識が、輸出市場の都合で封印された形です。今、世界中が「スキンコンタクト」「オレンジワイン」に熱狂するなか、この忘れられた伝統がフリウリとヴェネトで静かに復活しています。
日本での楽しみ方
ピノ・グリージョ・ロゼは、日本の食卓にとても馴染みやすいワインです。白身魚の煮付けや焼き魚、豆腐料理といった繊細な食材には軽やかな酸が引き立て役に。鶏の唐揚げや豚しゃぶは、白桃やネクタリンの甗みが料理の旨みを引き上げます。
フェデリーコのコツ:少し低め(10〜12℃)で出して、グラスのなかで温度が上がるにつれて変わる香りの変化を楽しんでみてください。最初は白桃の清潔感、後からオレンジの皮やナッツのニュアンスが顔を出す。この変化がラマートならではの醣醐味です。
フェデリーコのおすすめ
ヴェネトの家族経営ワイナリー「ボスコ・デル・メルロ」が造る、このピノ・グリージョ・ロゼ。ピアーヴェ川に沿った石礫の土壌で育ったブドウから生まれる、淡いサーモンピンクの辛口ロゼです。白桃、ネクタリン、かすかにビターオレンジ。フレッシュな酸と、スキンコンタクト由来のほんのりとした旨みが調和しています。
どう選ぶ?ピノ・グリージョ・ロゼ 選び方ガイド
- ラベルで選ぶ:「Ramato」表記あり=伝統スタイル。色が濃めで旨みが豊か
- 色で選ぶ:淡いサーモンピンク=軽やか。銅〜琥珀色=コクと複雑さ
- 産地で選ぶ:フリウリ=個性的なラマート本流。ヴェネト=フレッシュで食中酒向き
- 料理で選ぶ:魚介・鶏・豚しゃぶ→軽め。豚角煮・チーズ・きのこ料理→濃いめラマート
よくある質問(FAQ)
ピノ・グリージョ・ロゼはオレンジワインと同じですか?
近いですが、異なります。オレンジワインは白ブドウを長期間スキンコンタクトする「マセラシオン」で造りますが、ラマートは数時間〜2日程度のスキンコンタクト。白ワインと赤ワインの中間に近く、オレンジワインほどタンニンが強くありません。
甘いですか?
辛口が基本です。ロゼと聞くと甘いイメージがありますが、ピノ・グリージョ・ロゼはほぼすべて辛口。香りの甘さはありますが、飲んだときは引き締まった辛口です。
どれくらい保存できますか?
購入後2〜3年以内の若いうちに楽しむのがベストです。スキンコンタクト由来のタンニンがあるので白ワインよりやや長持ちしますが、フレッシュ感を楽しむためにも早めに開けるのをおすすめします。
赤ワインに近い?白ワインに近い?
どちらの性格も持ちますが、アルコール感やタンニンは赤よりずっと穏やかです。「白ワインが好きだが、少し膨らみがほしい」という方にぴったりの一本です。

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