ぶどうの家系図とは、ワイン用ぶどうの品種同士がどうつながっているかを、親子や兄弟のように血縁で表したものです。 近年のDNA研究で、別の名前で呼ばれていたワインが実は同じぶどうだったり、意外な品種同士が親子だったりすることが次々とわかってきました。私はイタリア出身で、東京でワインを注いできましたが、この「家系図」を知るとワイン選びが一気に楽しくなります。
同じぶどうなのに、名前が違う?
よくある誤解は、名前が違えば別のぶどうだと思ってしまうことです。実際には、国や地域をまたいで同じぶどうが別の名前で呈ばれている例がたくさんあります。代表が、イタリア南部プーリアのプリミティーヴォと、アメリカ・カリフォルニアのジンファンデル。違う国、違う名前ですが、DNAでは同じぶどうです。
意外な親戚たち
| ワイン | 関係 | 主な産地 |
|---|---|---|
| プリミティーヴォ=ジンファンデル | DNA上同じぶどう。クロアチアのトリビドラグがルーツ | プーリア / カリフォルニア / クロアチア |
| カベルネ・ソーヴィニヨン | カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの子供 | ボルドー |
| サンジョヴェーゼ | トスカーナのチリエジオーロと親子関係 | トスカーナ |
プリミティーヴォとジンファンデルが同じぶどうだと確定したのは、カリフォルニア大学デイヴィス校のキャロル・メレディス博士らの研究で、2001年のこと。クロアチアのトリビドラグ(クルイェナク)とも同じでした。面白いのは、プリミティーヴォもトリビドラグも、どちらも「早く熟す」を意味する言葉が語源だということです。
同じぶどうなのに、なぜ味が違うのか
DNAが同じでも、育つ場所が違えばワインは別物になります。これがテロワール(地の個性)の力です。
| 同じぶどう | スタイルの違い |
|---|---|
| プリミティーヴォ(プーリア) | 甘く熟した果実味と温かみ、渋みが穏やか |
| ジンファンデル(カリフォルニア) | ジャミーな果実味とスパイス、パワフルで濃厚 |
同じ遺伝子でも、日照や土壌、醸造の考え方が違えば風味は大きく変わります。だから「プリミティーヴォが好きならジンファンデルも試す価値がある」と言えます。家系図は、次に飲む一本を選ぶ地図になるのです。
日本での楽しみ方
家系図を知っていると、食卓での選び方が広がります。こっくりした肉料理には、サンジョヴェーゼの心地よい酸が脂を洗ってくれます。すき焼きや牛の赤しんのソテー、トマト以てのパスタにもよく合います。サンジョヴェーゼの代表産地の一つが、トスカーナ南部のマレンマです。
このマレンマには、イタリア版のカウボーイとも言うべき「ブッテリ」と呼ばれる騎馬の牋飼いたちがいます。アメリカのカウボーイが19世紀に生まれたのに対し、ブッテリの伝統はエトルリア時代にまでさかのぼる、ヨーロッパ最古のカウボーイ文化です。1890年には、バッファロー・ビルのワイルド・ウエスト・ショーがイタリアを訪れた際、マレンマのブッテリが騎馬の技を競って勝ったという逸話も残っています。そんな野性的な土地が、引き締まった酸と果実味のサンジョヴェーゼを育てます。日本の家庭では、サンジョヴェーゼの赤も夏は15〜18℃に軽く冷やすと、酸がさらに心地よく感じられます。
フェデリーコのおすすめ
家系図を楽しむなら、まずはサンジョヴェーゼの名門産地マレンマから。私がよくお出しするのはモレッリーノ・ディ・スカンサーノです。チェリーのような果実味と心地よい酸があり、サンジョヴェーゼの魅力がすっと入ってきます。下のカードから在庫と価格をご確認いただけます。
家系図のもう一方の主役、プリミティーヴォを試すなら、日本初・独占輸入のプーリア産ドッピオ・パッソ・プリミティーヴォをどうぞ。同じぶどうが、イタリアとアメリカでどう違うか、飲み比べるのも一興です。
選び方・似ている品種
「好きな一本の親戚をたどる」のが、家系図の一番楽しい使い方です。プリミティーヴォが好きならジンファンデルやネロ・ダーヴォラへ、カベルネ・ソーヴィニヨンが好きなら親であるカベルネ・フランへ。味の方向性が似ているので、外れにくくなります。関連記事としてジンファンデルとはもあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. プリミティーヴォとジンファンデルは本当に同じぶどうですか?
A. はい。DNA研究で、プリミティーヴォ、ジンファンデル、クロアチアのトリビドラグは同一の品種だと確認されています。味わいは産地で変わります。
Q. 同じぶどうなら味も同じですか?
A. いいえ。遺伝子が同じでも、日照や土壌、醸造の違いで風味はかなり変わります。同じぶどうを産地別に飲み比べるのは、ワインの醒醐味の一つです。
Q. カベルネ・ソーヴィニヨンの親は本当に白ぶどうですか?
A. はい。黒ぶどうのカベルネ・フランと、白ぶどうのソーヴィニヨン・ブランが自然交雑して生まれたことが、1997年のDNA研究で示されました。
Q. 家系図を知ると何の役に立ちますか?
A. 好きなワインの親戚をたどれば、次に試す一本を外しにくくなります。好みの方向を広げる地図になります。
Q. よくある誤解は?
A. 名前が違えば別のぶどうだと思い込むことです。プリミティーヴォとジンファンデルのように、名前が違っても中身は同じ、という例は意外と多いのです。

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