ボスコ・デル・メルロは、イタリア北東部、ヴェネト州とフリウリ州の境にあるアンノーネ・ヴェネトで、パラディン家が営むワイナリーです。プロセッコからレフォスコまで、土地の記憶をていねいに映した一本を造り続けています。私フェデリーコが東京で最初にお客様へ注いだイタリアのスパークリングも、この造り手のプロセッコでした。今日はその物語を少しお話しします。
「つぐみの森」の名を持つ家族の蔵
ボスコ・デル・メルロという名前は、この土地の古い地図に残る地名に由来します。「ボスコ」は森、「メルロ」はつぐみ。かつてこのあたりを覆っていた森の記憶を、そのまま名前にしたのです。ブドウ品種のメルローとは関係がありません。
造りの原点は1962年、ヴァレンティーノ・パラディンがこの地でブドウと向き合い始めたことにあります。そして1977年、彼はアンノーネ・ヴェネトにボスコ・デル・メルロを設立しました。子どもたち(カルロ、ルチア、ロベルト)が父の情熱を受け継ぎ、いまは三代目にあたるフランチェスカと従妹のマルティーナが蔵を導いています。60年以上、家族の手から手へと渡ってきた蔵です。伝統と革新を両立させる姿勢は、サステナビリティ認証(Equalitas)にも表れています。
ヴェネトとフリウリが出会う土地
アンノーネ・ヴェネトは、リゾン・プラマッジョーレと呼ばれるブドウ栽培地の一角にあります。ヴェネツィア共和国の時代から良質なワインを供給してきた、平野の恵まれた畑です。ここはヴェネトでありながら、すぐ隣はフリウリ。二つの食文化が静かに溶け合う場所です。
この境の土地には、日本ではほとんど知られていない飲み方があります。フリウリで「タユット(tajut)」と呼ばれる、小さなグラス一杯のワインです。地元の人は昼でも夕方でも、オステリア(大衆酒場)に立ち寄って「タユットを一杯」と頼みます。白でも赤でも、その日の気分で。サン・ダニエーレの生ハムや土地のチーズをつまみながら、立ち話のあいだにさっと飲み干す。「タユット」は「taglio(切る、注ぎ分ける)」から生まれた言葉で、かつて軽いワインに濃いワインを少し足して飲んだ習慣の名残です。日本の「ちょい飲み」に少し似た、肩の力の抜けた一杯です。
一本ずつに個性、ボスコ・デル・メルロの顔ぶれ
ボスコ・デル・メルロの魅力は、造る一本ずつに違う表情があることです。看板はやはりプロセッコ・ミレジマート・ブリュット。単一年(ミレジマート)のブドウから造る、りんごや洋梨の香りの辛口スパークリングです。淡いピンクのプロセッコ・ロゼ・ミレジマートは、売上の一部が乳がん予防の団体に寄付される一本。銅色に輝くピノ・グリージョ・ロゼは、グリージョの果皮の色をそのまま生かした辛口です。
赤や白の個性派もそろいます。レフォスコ・ロッジョ・デイ・ローヴェリは、茎が赤いことから「ダル・ペドゥンコロ・ロッソ(赤い果柄)」と呼ばれる、この土地ゆかりの品種。エレガントなシラー・セドゥツィオーネ(セドゥツィオーネは「誘惑」の意味)や、かつてこの地に暮らした修道士にちなんで名づけられたソーヴィニヨン・ブラン・トゥラニオもおすすめです。
日本の食卓でどう楽しむか
プロセッコは「甘い発泡酒」と思われがちですが、ボスコ・デル・メルロのブリュットはしっかり辛口です。よく冷やして(6〜9度)、食前の一杯にも、食事を通しても楽しめます。天ぷらや唐揚げの衣を泡が軽やかにリセットし、餃子や塩の焼き鳥とも好相性。前菜からメインまで寄り添う万能さが、日本の食卓に驚くほどなじみます。
ロゼやピノ・グリージョ・ロゼは、お刺身やお寿司、冷菜と合わせて。夏はよく冷やし、秋冬は少しだけ温度を上げると果実味がふくらみます。先ほどのタユットの精神で、平日の夜に肩肘張らず一杯、というのが私のいちばんのおすすめです。
フェデリーコがまず選ぶ一本
初めてこの造り手を試すなら、私がよくお出しするのはプロセッコ・ミレジマート・ブリュットです。価格も親しみやすく、食事を選ばず、開けた瞬間にその場が少し華やぎます。ボスコ・デル・メルロという家族の物語の、いちばんやさしい入り口だと思います。下のカードから今の在庫と価格をご覧いただけます。
よくある質問
Q. ボスコ・デル・メルロはどこのワイナリーですか?
A. イタリア北東部、ヴェネト州アンノーネ・ヴェネトの家族経営ワイナリーです。1977年設立で、ヴェネトとフリウリの境に畑があります。
Q.「ボスコ・デル・メルロ」はどんな意味ですか?
A. 直訳すると「つぐみの森」。この土地の古い地名に由来し、かつてあった森の記憶を映した名前です。
Q. プロセッコは甘口ですか?
A. ボスコ・デル・メルロのプロセッコ・ミレジマート・ブリュットは辛口です。「ブリュット」は辛口という意味で、食事に合わせやすいスタイルです。
Q. よくある誤解はありますか?
A.「メルロ」をブドウのメルローと勘違いされがちですが、蔵の名前は鳥のつぐみのこと。ワイン品種とは関係ありません。
家族が60年かけて磨いてきた一本を、どうぞ肩の力を抜いて楽しんでください。乾杯。

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