ヴィーノ・ノヴェッロ(vino novello)とは、その年に収穫したばかりのブドウから造る、イタリアの「新酒」です。マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法、ブドウを丸ごと発酵させる方法)という特別な造り方で、フレッシュで果実味たっぷり、渋みの少ない軽やかな赤に仕上がります。日本ではボジョレー・ヌーヴォーが「新酒」の代名詞ですが、イタリアにも毎年秋、同じように心待ちにされる新酒があります。
ボジョレー・ヌーヴォーとの違い(よくある誤解)
「ノヴェッロ=イタリア版ボジョレー」と思われがちですが、実は中身がかなり違います。ボジョレー・ヌーヴォーはフランス・ボジョレー地区のガメイ種から造られ、解禁日は11月の第3木曜日。いっぽうノヴェッロはイタリア各地のさまざまな品種から造られ、法律で10月30日午前0時1分から出荷が解禁され、その年の12月31日までに販売されます。
もうひとつの大きな違いは造り方です。イタリアのノヴェッロは2012年の法改正以降、少なくとも40%を炭酸ガス浸漬法で造ることが義務づけられています(それ以前は30%)。名乗れるのはDOP・IGPに認められたワインだけ、アルコール度数11度以上、残糖10g/L以下、というルールもあります。つまりノヴェッロは「イタリアの真似」ではなく、独自の法律に守られたイタリアの秋の風物詩なのです。
味わいの特徴
炭酸ガス浸漬法では、つぶさないブドウを丸ごとタンクに入れ、果実の内側から発酵を始めさせます。これによりバナナやイチゴキャンディのような華やかな香りが生まれ、渋み(タンニン)はごく控えめになります。冷やしてごくごく飲める、秋のピクニックワインのような1本です。
| 項目 | 傾向 |
|---|---|
| ボディ | ライト |
| 酸味 | 中程度、フレッシュ |
| タンニン | ごく軽い |
| 香り | 赤い果実、バナナ、あめ、花 |
| 飲み頃温度 | 12〜14度(やや冷やして) |
産地で変わるスタイル
ノヴェッロはイタリア全土で造られますが、産地によって表情が変わります。
| 産地 | スタイルの傾向 |
|---|---|
| ヴェネト州 | 生産量が多く、軽快でフルーティー。食卓の定番 |
| ピエモンテ州 | バルベーラなどを使い、酸のきいた引き締まった味わい |
| トスカーナ州 | サンジョヴェーゼ主体、やや骨格のあるタイプ |
造りの面では、炭酸ガス浸漬法の比率が高いほど香りは華やかになり、果実味が前面に出ます。ノヴェッロは熟成させるワインではなく、「今、この秋に飲む」ためのワイン。ボトルを開けたら早めに楽しむのが鉄則です。
日本での楽しみ方
イタリアでノヴェッロといえば、秋の風物詩「サン・マルティーノ(San Martino、聖マルティヌスの日、11月11日)」と切り離せません。この日、農家は新しい樽を開けて新酒を味見し、各地の村祭り(サーグラ)では焼き栗(カルダロステ)とノヴェッロを一緒に楽しみます。「サン・マルティーノには、どんな搾りたても立派なワインになる」という古いことわざもあるほど、イタリア人にとっては当たり前の秋の習慣です。日本ではボジョレーばかりが知られていますが、この焼き栗と新酒の組み合わせこそ、イタリアの本当の秋の味なのです。
日本の食卓なら、軽く冷やして、焼き鳥(塩)、秋刀魚の塩焼き、きのこのソテー、栗ご飯や焼き芋といった秋の味覚と合わせてみてください。渋みが少ないので、和食の繊細な出汁ともけんかしません。セラーがなくても、飲む30分前に冷蔵庫に入れておけばちょうどよい温度になります。
フェデリーコのおすすめ
ノヴェッロそのものは季節限定で数も少ないのですが、「搾りたてのようにフレッシュで果実味豊かな軽い赤」という魅力は、一年中楽しめるワインでも味わえます。私がこの季節によくお出しするのは、ピエモンテのアレッサンドロ・リヴェットが造るバルベーラ・ダルバ。しっかりした酸とジューシーな果実味、軽やかな口当たりは、まさにノヴェッロ好きにぴったりの普段飲みの赤です。少し冷やして、栗料理やきのこ料理と合わせるのが私のお気に入りです。
選び方・飲み頃
ノヴェッロを選ぶときは、必ずその年のヴィンテージであることを確認してください。前年のノヴェッロはすでに旬を過ぎています。開けたら数日以内に飲み切るのが理想。冷やしすぎず、12〜14度で香りを楽しみましょう。フランスの新酒との違いをおさらいするなら、ボジョレー・ヌーヴォーの記事もあわせてどうぞ。
よくある質問
ノヴェッロは何年も寝かせられますか?
いいえ。ノヴェッロは熟成用ではなく、その年のうちに飲み切るワインです。買ったら早めに楽しんでください。
ボジョレー・ヌーヴォーとどちらが甘いですか?
どちらも辛口が基本です。残糖はノヴェッロで10g/L以下と決まっており、甘いお酒ではありません。フルーティーな香りを「甘い」と感じることはあります。
よくある失敗は?
常温のまま飲んでしまうことです。少し冷やすだけで香りと果実味がぐっと引き立ちます。
いつ手に入りますか?
イタリアのノヴェッロは毎年10月30日以降に登場し、年内で姿を消します。秋だけの楽しみです。

コメント (0)
この記事に対するコメントはありません。真っ先にメッセージを残してください!