おせちに合うワインは、重い赤を一本だけ用意するのではなく、祝い肴(いわいざかな)の流れに合わせて、泡から白、赤、甘口へと移していくのがコツです。 お屠蘇やお酒で乾杯したあと、数の子やかまぼこには泡や白、煮しめやブリの照り焼きには軽やかな赤、黒豆や栗きんとんの甘い一品には甘口のワイン。おせちは味の濃さも甘さもさまざまなので、一本で通すより、流れで選ぶと驚くほど楽しくなります。
私はイタリア出身で、東京でイタリアワインを輸入し、毎日のようにグラスを注いでいます。お正月のおせちは、もともと日本酒やお屠蘇と合わせるものですが、じつはイタリアワイン、とくに泡とよく合います。イタリアにも、新年に縁起をかついで特定の料理を食べる習慣があり、おせちと通じるものがあるのです。この記事では、おせちの定番の品を一つずつ取り上げながら、Swirlのセラーで実際に飲める一本を、できるだけやさしくご紹介します。今年のお正月は、いつものおせちにワインを一本添えてみませんか。
よくある誤解:「おせちは繊細すぎてワインは合わない」ではありません
いちばん多い誤解は、「おせちは出汁や醤油の繊細な味つけだから、ワインは香りや味が強すぎて合わない」というものです。たしかに、渋くて重い赤を合わせると、おせちの上品な味を押し流してしまいます。でも、それは赤ワインの選び方の問題であって、ワイン全体の問題ではありません。
おせちといちばん相性がいいのは、じつはスパークリングワインです。細かい泡と爽やかな酸が、数の子の塩気やブリの脂、かまぼこの弾力を軽やかにリセットしてくれます。白ワインなら、出汁のうまみとけんかしない、すっきりした柑橘系のものを。赤なら、渋みの穏やかな軽やかなタイプを選べば、煮しめや肉の祝い肴にきれいに寄り添います。「おせちにワインは無理」ではなく、「おせちには泡と、軽やかな白・赤を」。これだけ覚えておけば失敗しません。
おせちのワインは「祝い肴の流れ」で選ぶ
おせちは品数が多く、味も濃いものから甘いものまでさまざまです。重箱を端から食べ進める流れに合わせて、ワインも次の四つのステップで考えると、ぐっと分かりやすくなります。
乾杯・祝い肴
スパークリング。数の子、かまぼこ、田作りに。新年の乾杯にも
魚介・酢の物
すっきりした白。紅白なます、酢だこ、昆布巻きに
煮物・焼き物
軽やかな赤。煮しめ、筑前煮、ブリの照り焼きに
甘い祝い肴
甘口。黒豆、栗きんとん、伊達巻に、やさしい甘さを
お正月は、お屠蘇やお酒での乾杯のあとに、ワインへ移っていくのが自然です。全部をそろえなくても、泡を一本と甘口を一本あれば、おせちのほとんどの品をカバーできます。まずはこの二本から、と覚えておくと気楽です。
STEP 1:乾杯と祝い肴のスパークリング
新年の乾杯は、やはり泡が華やかです。スパークリングワインは、細かい泡と酸が口の中をさっぱりさせてくれるので、塩気やうまみの強い祝い肴にぴったり。数の子のプチプチした食感と塩気、かまぼこの弾力、田作りの香ばしさ、どれも泡がきれいに受け止めます。
紅白のおめでたい席には、ピンク色のプロセッコ・ロゼ・ミレジマートがよく似合います。華やかな見た目で、お正月のテーブルがぐっと明るくなります。すっきり辛口がお好みなら、プロセッコ・ミレジマート・ブリュットを。青りんごや白い花の香りの軽やかな泡で、祝い肴から煮物まで幅広く寄り添います。
STEP 2:魚介と酢の物に合う白ワイン
紅白なます、酢だこ、昆布巻き、菊花かぶといった、さっぱりした魚介や酢の物には、すっきりした白ワインがよく合います。酢の物の酸味には、同じように酸のある白を合わせると、味がきれいにまとまります。
おすすめは、ヴェネト州(イタリア北東部)のファリナルド・ソアヴェやピノ・グリージョ。柑橘やハーブの爽やかな香りで、出汁のうまみを邪魔せず、魚介の繊細な味を引き立てます。香り高い白がお好みなら、ピエモンテ州(イタリア北西部)のランゲ・アルネイスも素敵です。アルネイスは柔らかな果実味と穏やかな酸があり、昆布巻きや伊達巻のような、少し甘みのある品にもやさしく寄り添います。
STEP 3:煮物と焼き物に合う赤ワイン
煮しめ、筑前煮、ブリの照り焼き、牛肉の八幡巻きといった、醤油やみりんでしっかり味つけした品には、軽やかな赤ワインの出番です。ここで渋い重い赤を選ばないのがコツ。甘辛い味つけには、果実味があって渋みの穏やかな赤がよく合います。
軽やか・酸やか
トスカーナのサンジョヴェーゼ
- 明るいチェリーの果実味ときれいな酸
- 煮しめ、筑前煮、鶏の祝い肴に
果実味ゆたか
プーリアのプリミティーヴォ
- 完熟した果実、まろやかな口当たり
- ブリの照り焼き、牛肉の八幡巻きに
甘辛い味つけに
共通するポイント
- 渋みが穏やかで果実味のある赤を
- みりんや醤油の甘みに果実が呼応する
甘辛い醤油味の祝い肴にいちばん寄り添うのは、トスカーナ州マレンマのモレッリーノ・ディ・スカンサーノです。サンジョヴェーゼという品種から生まれる、明るいチェリーの果実味とさわやかな酸が、煮しめや鶏の煮物の甘じょっぱさにきれいに合います。渋さが穏やかなので、繊細なおせちを邪魔しません。ブリの照り焼きや牛肉の八幡巻きのような、脂と甘辛さのある品には、プーリア州のドッピオ・パッソ・プリミティーヴォを。完熟した果実の甘い香りが、みりんの照りとよく響き合います。
STEP 4:甘い祝い肴に合う甘口ワイン
おせちには、黒豆、栗きんとん、伊達巻、きんとんのような、甘い祝い肴がたくさんあります。この甘い品に辛口のワインを合わせると、ワインがすっぱく、やせて感じられてしまいます。甘いものには、少し甘いワインを。これが基本です。
やさしい甘さと弱い泡が魅力のモスカート・ダスティや、気軽に楽しめるドッピオ・パッソ・モスカートは、黒豆や栗きんとんの上品な甘さにぴったりです。白桃やあんずのような甘い香りが、きんとんのねっとりした甘さや、伊達巻のふんわりした甘さにそっと重なります。アルコールも低め(5パーセント前後)なので、お正月の昼下がりから、のんびり楽しめるのもうれしいところです。甘さがくどく感じたら、よく冷やして出すと、弱い泡と酸が立って後味がすっきりまとまります。
おせちの品別、ワインの合わせ方(ここが本題)
ここからが本番です。おせちの定番の品ごとに、どんなワインが合うのかを一覧にまとめました。重箱を開けながら、ぜひ参考にしてみてください。
| おせちの品 | おすすめのワイン | ひとこと |
|---|---|---|
| 数の子 | プロセッコ(辛口の泡) | プチプチの食感と塩気を、泡と酸がさっぱりさせる |
| かまぼこ・紅白なます | プロセッコ・ロゼ/ソアヴェ | 紅白のおめでたさに、ピンクの泡やすっきりした白を |
| 田作り・たたきごぼう | プロセッコ/アルネイス | 香ばしさとほろ苦さを、泡や香りの白が引き立てる |
| 昆布巻き・酢だこ | ソアヴェ/ピノ・グリージョ | 出汁と酸味に、柑橘系の白がきれいに寄り添う |
| 煮しめ・筑前煮 | モレッリーノ(軽やかな赤) | 甘辛い醤油味に、チェリーの果実味と酸が合う |
| ブリの照り焼き・八幡巻き | プリミティーヴォ(果実味の赤) | 脂とみりんの照りに、完熟果実のまろやかさが呼応 |
| 黒豆・栗きんとん・伊達巻 | モスカート・ダスティ(甘口) | 甘い祝い肴には、やさしい甘さの弱発泡を |
おせちとワインを合わせるときのいちばんの近道は、迷ったらスパークリングにすることです。おせちは一つの重箱の中に、塩気のある数の子、酸味の効いた酢の物、甘辛い煮物、甘い栗きんとんと、まったく違う味が同時に並びます。一本の赤や白でこの全部に寄り添うのは難しいのですが、泡の細かい刺激と爽やかな酸は、どの味もいったんリセットしてくれるので、品を選ばず箸が進みます。お屠蘇で新年のあいさつをすませたあと、二杯目からはプロセッコに持ち替える。そんな新しいお正月の習慣も、年々増えています。昼からゆっくり、家族でおせちをつつきながらグラスを傾ける時間は、イタリアの長いお正月の食卓とも、どこか似ています。
お正月に気をつけたいのは、ワインの温度です。おせちと合わせる泡や白は、冷蔵庫でしっかり冷やして(白は8〜10℃、泡は6〜8℃)出すと、祝い肴の塩気や脂を軽やかにしてくれます。赤は、冬の室温より少し冷やし気味に、飲む前に20分ほど冷蔵庫に入れて16〜18℃にすると、果実味が立って、甘辛い煮物にちょうどよく合います。ワインセラーがなくても、この「ひと冷やし」だけで十分です。お正月はついつい飲み過ぎてしまうので、アルコール低めのモスカート・ダスティを一本用意しておくと、最後までおだやかに楽しめます。
フェデリーコのおすすめ:お正月の一本、二本、フルコース
「おせちに合わせて何を選べばいい?」という方のために、人数と過ごし方に合わせた選び方をご紹介します。
二人や少人数のお正月なら、泡を一本と甘口を一本。プロセッコ・ロゼで乾杯して祝い肴から煮物まで通し、甘い祝い肴にモスカート・ダスティ。これだけでお正月の食卓が華やぎます。
家族が集まるお正月なら、泡・白・赤・甘口を流れに沿って。乾杯にプロセッコ・ロゼ、酢の物や魚介にファリナルド・ソアヴェ、煮物や焼き物にモレッリーノかプリミティーヴォ、甘い祝い肴にモスカート・ダスティ。おせちの重箱の流れに、ワインの流れを重ねるだけです。
Swirlで飲めるおせち向けワイン早見表
祝い肴の流れごとのおすすめを、価格の目安とあわせてまとめました。在庫と最新価格は各商品ページでご確認ください。
| 流れ | ワイン | タイプ | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| 乾杯・祝い肴 | プロセッコ・ロゼ・ミレジマート | スパークリング・ロゼ | ¥3,700 |
| 乾杯・祝い肴 | プロセッコ・ミレジマート・ブリュット | スパークリング(辛口) | ¥3,300 |
| 魚介・酢の物 | ファリナルド・ソアヴェ | 白(すっきり) | ¥3,700 |
| 魚介・酢の物 | ピノ・グリージョ | 白(軽やか) | ¥3,700 |
| 魚介・伊達巻 | ランゲ・アルネイス | 白(香り高い) | ¥4,500 |
| 煮物・焼き物 | モレッリーノ・ディ・スカンサーノ | 赤(軽やか・サンジョヴェーゼ) | ¥3,850 |
| 煮物・焼き物 | ドッピオ・パッソ・プリミティーヴォ | 赤(果実味ゆたか) | ¥2,200 |
| 甘い祝い肴 | モスカート・ダスティ | 甘口・弱発泡 | ¥3,900 |
| 甘い祝い肴 | ドッピオ・パッソ・モスカート | 甘口・弱発泡 | ¥2,200 |
選び方:シーンから選ぶ
迷ったら、お正月の過ごし方から逆算すると失敗しません。
- 二人や少人数で静かに → 泡(プロセッコ・ロゼ)+甘口(モスカート・ダスティ)の二本
- とにかく一本で楽しみたい → よく冷やしたプロセッコ。祝い肴から煮物まで幅広く合う
- 煮しめやブリの照り焼きが好き → 軽やかなモレッリーノか、果実味のプリミティーヴォ
- 家族が集まる華やかなお正月 → 泡・白・赤・甘口を流れに沿って
- 黒豆や栗きんとんが楽しみ → 甘い祝い肴には必ず甘口のワインを
- お酒は軽めにしたい → アルコール低めのモスカート・ダスティを中心に
料理別のより詳しい合わせ方は和食に合うワインやスパークリングワインに合う料理も、甘口の選び方は甘口・微発泡ワインの選び方もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. おせちにワインは本当に合いますか?
A. とてもよく合います。とくにスパークリングは、数の子の塩気やブリの脂、かまぼこの弾力を軽やかにしてくれます。白は酢の物や魚介に、軽やかな赤は煮しめや焼き物に、甘口は黒豆や栗きんとんに。品ごとに選べば、おせちとワインは驚くほど相性がよくなります。
Q. おせちに赤ワインは合いませんか?
A. 渋くて重い赤は繊細な味を押し流してしまいますが、軽やかで渋みの穏やかな赤なら、煮しめやブリの照り焼きのような甘辛い品にきれいに寄り添います。サンジョヴェーゼやプリミティーヴォのような、果実味のある赤を選ぶのがコツです。
Q. 黒豆や栗きんとんに合うワインは?
A. モスカート・ダスティのような、やさしい甘さの弱発泡がおすすめです。甘い祝い肴には、少し甘いワインを合わせるのが基本。辛口を合わせると、甘さでワインがすっぱく感じてしまいます。
Q. お正月の乾杯にはどのワインがいいですか?
A. 華やかなプロセッコ・ロゼや、すっきり辛口のプロセッコがおすすめです。泡は新年のお祝いの気分を盛り上げてくれますし、祝い肴のほとんどに寄り添う、守備範囲の広い一本です。
Q. よくある失敗は?
A. 甘い祝い肴に辛口のワインを合わせてしまうことです。甘いものには甘いワインを、と覚えておけば安心です。もうひとつは、泡や白をぬるいまま出してしまうこと。しっかり冷やすと、おせちの塩気や脂がぐっと軽やかになります。
おせちとワインは、むずかしく考える必要はありません。祝い肴の流れに沿って、泡から始めて、最後は甘口で締めくくる。いつものおせちにワインを一本添えるだけで、お正月の食卓がぐっと華やぎ、家族の会話も弾みます。今年のお正月に、ぜひ気軽に試してみてください。
参考:イタリアの大晦日(カポダンノ)のコテキーノとレンズ豆(縁起物)の習慣はTransparent Language「Il cenone di Capodanno」、Luca's Italy「What do Italians eat for New Year?」、All Things Sicilian and More「Italian New Year's Lentils」を参照。










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