忘年会のワイン選びでいちばん大切なのは、一本で通そうとせず、シーン(乾杯・飲みやすい白・メインの赤・締めの甘口)と人数に合わせて選ぶことです。 乾杯の泡、みんなが気軽に飲める白、鍋や揚げ物を受け止める赤、そして最後に甘口を一本。この流れさえ押さえれば、大人数の宴会でも、少人数のおうち忘年会でも、お酒に強くない人がいても、まず失敗しません。
私はイタリア出身で、東京でイタリアワインを輸入し、毎日のようにグラスを注いでいます。イタリアにも年末に仲間や家族で集まり、長い食卓を囲んで飲む文化があり、一杯が人と人をつなぐ空気は、日本の忘年会とよく似ています。この記事では、幹事の方が迷わないように、人数別・予算別の選び方と、Swirlのセラーで実際に飲める一本を、できるだけやさしくご紹介します。難しい知識はいりません。順番に読んでいけば、今年の忘年会のワインが決まります。
よくある誤解:「大人数だから、無難にビールと赤ワイン一本でいい」ではありません
幹事の方からいちばん多く聞く誤解が、「人数が多いから、とりあえずビールと、濃いめの赤ワインを一本置いておけば足りる」というものです。これは少しもったいない考え方です。忘年会のテーブルには、鍋や揚げ物、ピザ、刺身、チーズの盛り合わせ、最後のデザートまで、味の濃さも温度もばらばらの料理が並びます。重い赤を一本だけ置いても、さっぱりした前菜や魚には強すぎ、甘いデザートにはまったく合いません。
コツは、料理と場の流れに合わせて、軽い泡から始めて、飲みやすい白、そして赤へと移し、最後は甘口で締めること。とはいえ、何本も開けるのは大変という方も多いはずです。そんなときは、泡(スパークリング)を一本と、果実味のある赤を一本。この二本があれば、乾杯から揚げ物、鍋、ピザまで、ほとんどの料理をカバーできます。人数が増えるほど大切になるのは、味の好みが分かれても「誰でも飲みやすいこと」と、足りなくならない「本数の読み」です。この二つを押さえれば、幹事の仕事はぐっと楽になります。
忘年会のワインは「シーンと人数」で選ぶ
まずは、会の流れに沿って考えてみましょう。ワインを次の四つのステップで組み立てると、ぐっと分かりやすくなります。
乾杯
スパークリング。泡と酸で場を開き、最初のひと皿に寄り添う
飲みやすい白
軽やかな白。ビールや泡が苦手な人にも。前菜や刺身に
メインの赤
赤。鍋、揚げ物、ピザ、焼き物を受け止める主役
締めの甘口
甘口。デザートや、お酒に強くない人へのやさしい一本
この順番は、イタリアの食卓そのものでもあります。まず泡で乾杯し、軽い料理に白、メインに赤、最後にお菓子と甘口。全部をそろえる必要はありません。少人数なら泡と赤の二本、大人数なら泡を多めにして白と赤を何本か、というように、人数に合わせて本数を足していけば大丈夫です。
STEP 1:全員の乾杯は、泡で
忘年会の始まりは、やはり泡で乾杯です。スパークリングワインは、細かい泡と爽やかな酸が食欲を開いてくれるので、会の最初にぴったり。生ハムやチーズ、サラダ、から揚げまで、最初に出てくる料理の多くに寄り添います。グラスがぱっと華やぐので、一年の労をねぎらう乾杯の一杯としても気分が上がります。
私がよくお出しするのは、辛口のプロセッコ・ミレジマート・ブリュット。ヴェネト州(イタリア北東部)の造り手ボスコ・デル・メルロが手がける、青りんごや白い花を思わせる軽やかな泡で、値段も手ごろなので、大人数の乾杯用にケースで用意される幹事さんも多い一本です。乾杯をより華やかにしたいなら、ピンク色が可愛いプロセッコ・ロゼ・ミレジマートもおすすめ。写真うつりもよく、年末の集まりを少し特別に見せてくれます。
STEP 2:大人数が「気軽に飲める」白
乾杯のあと、席が落ち着いてきたら、飲みやすい白ワインを用意しておくと、ビールや泡が続かない人にも喜ばれます。忘年会の白は、香りや樽の個性が強すぎず、冷やしてすいすい飲める軽やかなタイプが正解です。刺身やカルパッチョ、サラダ、だしの効いたおでんのような、さっぱりした料理にもよく寄り添います。
定番は、ヴェネトのファリナルド・ソアヴェやピノ・グリージョ。どちらも柑橘やハーブの爽やかな香りで、クセがなく、幅広い人に飲みやすい白です。少し個性のある白を混ぜたいときは、マレンマ・トスカーナのバルビーノ(ヴェルメンティーノ)の塩気を感じる旨みや、シチリアのインゾーリアのやわらかな果実味も、食卓に変化をつけてくれます。白は一種類にしぼらず、二種類を並べて飲みくらべてもらうと、それだけで会話のきっかけになります。
STEP 3:鍋・揚げ物・ピザに合う赤
忘年会のメインは、鍋、揚げ物、ピザ、焼き物など、しっかりした料理が中心です。ここで赤ワインの出番。料理の濃さや、参加者の好みに合わせて、軽やかな赤から果実味ゆたかな赤まで選べます。渋みの強すぎる重い赤よりも、果実味がのっていて飲みやすい赤のほうが、大人数には喜ばれます。
軽やか・冷やしても
ピエモンテのバルベーラ/トスカーナのサンジョヴェーゼ
- 明るい果実味ときれいな酸、穏やかな渋み
- おでん、焼き鳥、トマト系の料理に
果実味ゆたか(主役)
プーリアのプリミティーヴォ
- 完熟した黒い果実、まろやかで飲みやすい
- 鍋、揚げ物、ピザ、甘辛い味つけに
スパイシー
ヴェネトのシラー
- 黒こしょうを思わせる香りと力強さ
- 焼き肉、濃い味の肉料理に
忘年会の赤でいちばん頼れるのは、プーリア州のドッピオ・パッソ・プリミティーヴォです。完熟した黒い果実の甘い香りとまろやかな口当たりで、渋さがひかえめなので、赤が得意でない人でもすっと飲めます。甘辛い味つけの料理やピザ、揚げ物に広く合い、価格も手ごろ。幹事が大人数ぶんをそろえやすい、忘年会の主役にうってつけの一本です。もう少しきれいな酸がほしいときは、トスカーナ州マレンマのモレッリーノ・ディ・スカンサーノ(サンジョヴェーゼ)。明るいチェリーの果実味が、ローストチキンやトマト料理にすっと寄り添います。おでんや冷めた料理には、軽く冷やしておいしいピエモンテのバルベーラ・ダルバを。焼き肉や濃い味の肉には、黒こしょうの香りが心地よいシラー・セドゥツィオーネも活躍します。
STEP 4:締めの甘口と、お酒に強くない人への一本
会の締めには、甘口を一本そえておくと、場がやさしくまとまります。見落とされがちですが、甘いデザートには甘口のワインを合わせるのが基本。辛口の赤をケーキに合わせると、ワインがすっぱく、やせて感じられてしまいます。
やさしい甘さと弱い泡が魅力のドッピオ・パッソ・モスカートは、デザートの定番の相手であると同時に、アルコールが5パーセント前後と低めなので、お酒に強くない人や、もう一杯だけ飲みたい締めの場面にもぴったりです。ワインが得意でない人がいても、甘口の弱発泡があれば、無理なく乾杯の輪に入ってもらえます。幹事としては、この一本が「全員が楽しめる会」をつくる、さりげない気づかいになります。
日本の忘年会での楽しみ方(ここが本題)
ここからが本番です。日本の忘年会には、イタリアにはない独自のごちそうがあります。鍋、から揚げ、宅配ピザ、刺身、チーズの盛り合わせ。この日本ならではのメニューに、ワインはどう合わせればいいのでしょうか。
まず、冬の忘年会の主役といえば鍋です。鍋はつゆ(だし)によって合うワインが変わります。あっさりした水炊きや湯豆腐には、だしの旨みを邪魔しない軽やかな白や泡を。ピリ辛のキムチ鍋には、果実味のあるプリミティーヴォの赤が、辛さをやわらげてくれます。甘辛いすき焼きには、同じく果実味ゆたかなプリミティーヴォが好相性。だしのおでんには、軽い白や、軽く冷やした赤がやさしく寄り添います。から揚げには、衣の脂を泡が軽やかに切ってくれるプロセッコが鉄板。宅配ピザやグラタンのような濃い料理には、プリミティーヴォやモレッリーノの赤が頼りになります。刺身やカルパッチョには、冷やした白か泡を合わせると、魚の繊細な味が引き立ちます。
| 忘年会の定番料理 | おすすめのワイン | ひとこと |
|---|---|---|
| 水炊き・湯豆腐(鍋) | ソアヴェ/プロセッコ | だしの旨みを邪魔しない、軽やかな白と泡 |
| キムチ鍋・すき焼き | プリミティーヴォ(果実味の赤) | 完熟果実の甘みが、辛さや甘辛さをやわらげる |
| から揚げ・揚げ物 | プロセッコ(辛口の泡) | 細かい泡と酸が衣の脂を切り、軽くしてくれる |
| 宅配ピザ・グラタン | プリミティーヴォ/モレッリーノ | トマトやチーズの濃さに、果実味の赤がよく合う |
| 刺身・カルパッチョ | ピノ・グリージョ/プロセッコ | 冷やした白と泡が、魚の繊細な味を引き立てる |
| おでん | ソアヴェ/軽く冷やしたバルベーラ | だしに寄り添う軽い白と、冷やした軽い赤 |
| チーズの盛り合わせ | プリミティーヴォ/プロセッコ | 熟成チーズには赤、フレッシュには泡が合う |
| デザート・ケーキ | モスカート(甘口) | 甘いお菓子には、やさしい甘さの弱発泡を |
幹事がいちばん迷うのが「何本用意すればいいか」です。目安は、一本でグラス6〜7杯ぶん。乾杯は全員が飲むので泡を多めに、そのあとは白と赤を半々くらいで考えると読みやすくなります。
2〜3本(泡1・白1・赤1)
4〜5本(泡2・白1〜2・赤2)
泡を多めに6本以上(泡3・白2・赤3を目安に)
もうひとつ大事なのが、ワインの温度です。よくある失敗が、泡や白をぬるいまま出してしまうこと。泡は6〜8℃、白は8〜10℃まで、冷蔵庫でしっかり冷やすと本来の爽やかさが生きます。逆に赤は、日本の暖房の効いた室内では少し温まりすぎることがあるので、飲む前に20分ほど冷蔵庫に入れて16〜18℃に下げると、果実味がきれいに立ちます。ワインセラーがなくても、この「冷蔵庫でひと調整」だけで、同じワインが見違えます。持ち寄りの忘年会なら、泡と白は保冷バッグで冷やして持参し、赤は常温でそっと運ぶと、現地での準備がぐっと楽になります。
幹事のための早見表:シーンと予算で選ぶ
忘年会の流れごとに、おすすめのワインを価格の目安とあわせてまとめました。在庫と最新価格は各商品ページでご確認ください。
| シーン | ワイン | タイプ | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| 乾杯 | プロセッコ・ミレジマート・ブリュット | スパークリング(辛口) | ¥3,300 |
| 乾杯(華やか) | プロセッコ・ロゼ・ミレジマート | スパークリング・ロゼ | ¥3,700 |
| 飲みやすい白 | ピノ・グリージョ | 白(軽やか) | ¥3,700 |
| 飲みやすい白 | ファリナルド・ソアヴェ | 白(すっきり) | ¥3,700 |
| 個性の白 | バルビーノ(ヴェルメンティーノ) | 白(旨み) | ¥4,400 |
| メインの赤(主役) | ドッピオ・パッソ・プリミティーヴォ | 赤(果実味ゆたか) | ¥2,200 |
| メインの赤 | モレッリーノ・ディ・スカンサーノ | 赤(軽やか・サンジョヴェーゼ) | ¥3,850 |
| 冷やす赤 | バルベーラ・ダルバ | 赤(軽やか) | ¥4,900 |
| 締めの甘口 | ドッピオ・パッソ・モスカート | 甘口・弱発泡(低アルコール) | ¥2,200 |
| 幹事の特別な一本 | ペタルマ・ギャップ・ピノ・ノワール | 赤(エレガント) | ¥7,150 |
フェデリーコのおすすめ:少人数・大人数・持ち寄り
「結局、何を買えばいい?」という幹事さんのために、シーン別の組み立てをご紹介します。
少人数(4人ほど)のおうち忘年会なら、泡を一本、果実味の赤を一本、締めに甘口を一本。プロセッコで乾杯して、鍋や料理にプリミティーヴォ、最後にモスカート。これだけで、ぐっと会らしくなります。
大人数(6〜10人)なら、乾杯の泡を多めに、飲みやすい白と赤を何本かずつ。乾杯にプロセッコ、白にピノ・グリージョとソアヴェ、赤にプリミティーヴォとモレッリーノを。幹事をねぎらう特別な一本には、ペタルマ・ギャップ・ピノ・ノワールを加えると、会に華が出ます。持ち寄りの忘年会なら、飲みやすい泡と赤をそれぞれ持ち寄るとかぶりにくく、価格も手ごろなプリミティーヴォは、一本持っていけば必ず喜ばれる鉄板です。
選び方:シーンから選ぶ
迷ったら、会の過ごし方から逆算すると失敗しません。
- とりあえず乾杯で盛り上げたい → よく冷やしたプロセッコを多めに
- お酒に強くない人がいる → 低アルコールのモスカートと、飲みやすいピノ・グリージョを用意
- 鍋がメイン → つゆに合わせて、軽い白か果実味のプリミティーヴォを
- から揚げ・揚げ物が多い → 冷えたプロセッコ一本で間違いなし
- 大人数で予算を抑えたい → 手ごろで誰でも飲めるプリミティーヴォとプロセッコを軸に
- 持ち寄りで一本だけ選ぶ → かぶりにくく喜ばれるプリミティーヴォが鉄板
料理別のより詳しい合わせ方は唐揚げに合うワインやスパークリングワインに合う料理も、年末の集まりの流れはクリスマスのワイン、コース別の選び方もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. 忘年会にワインは何本用意すればいいですか?
A. 一本でグラス6〜7杯ぶんが目安です。4人なら2〜3本、6〜8人なら4〜5本、10人以上なら泡を多めに6本以上。乾杯は全員が飲むので、泡を一本多めに用意しておくと安心です。
Q. お酒に強くない人や、あまり飲まない人がいます。
A. アルコールが5パーセント前後と低い、ドッピオ・パッソ・モスカートのような甘口の弱発泡がおすすめです。やさしい甘さで飲みやすく、乾杯の輪にも自然に入ってもらえます。飲みやすいピノ・グリージョを少量そえておくのも親切です。
Q. 鍋に合うワインは?
A. つゆ(だし)によって変わります。水炊きや湯豆腐には軽やかな白や泡、キムチ鍋や甘辛いすき焼きには果実味のあるプリミティーヴォの赤がよく合います。だしのおでんには、軽く冷やしたバルベーラのような軽い赤も好相性です。
Q. 持ち寄りの忘年会で、失敗しない一本は?
A. 手ごろで誰にでも飲みやすい、ドッピオ・パッソ・プリミティーヴォが鉄板です。鍋・揚げ物・ピザと幅広く合い、一本持っていけばまず喜ばれます。かぶりが心配なら、乾杯用のプロセッコを選ぶ人と役割を分けると安心です。
Q. よくある失敗は?
A. 泡や白をぬるいまま出してしまうことです。泡は6〜8℃、白は8〜10℃までしっかり冷やすと本来の爽やかさが生きます。もうひとつは、重い赤を一本だけ用意してしまうこと。果実味のある飲みやすい赤のほうが、大人数の忘年会では喜ばれます。
忘年会のワインは、むずかしく考える必要はありません。乾杯は泡で、料理には飲みやすい白と果実味の赤を、締めは甘口で。この流れさえ押さえれば、一年をねぎらう食卓が、ぐっと華やぎます。今年の忘年会に、ぜひ試してみてください。
参考:ヴェネトのオンブラ(l'ombra)とジーロ・ダ・オンブレの習慣はRick Steves「Crawling Through Venice's Cicchetti Pubs」、Smithsonian Magazineを、イタリアの大晦日(カポダンノ)のレンズ豆とコテキーノ/ザンポーネ(モデナ)の縁起かつぎはidealista「Italian New Year's Eve traditions」、Fine Dining Loversを参照。












コメント (0)
この記事に対するコメントはありません。真っ先にメッセージを残してください!